第37回城戸賞 入選 土橋章宏『超高速! 参勤交代』
『超高速!参勤交代』は、磐城の誠実な小藩が、お取りつぶしを画策する幕府から「一週間以内に参勤交代せよ」、と無理難題を言われつつも、東国一の忍者の助けを借りて、水戸街道、時には野山を超高速で駆け抜け、見事、強欲な江戸家老の鼻をあかすお話です。
この話を書こうと思ったのは、世界で大ヒットする日本映画を作りたいと思ったことがきっかけでした。ハリウッドや韓流コンテンツに負けず、日本も開国して、世界に打って出るべきだ、と。
海外で違和感なく通用する日本のコンテンツのは、やはりサムライと忍者だと思います。そして参勤交代は、珍しい日本の文化として興味を持たれるだろうと思いました。
また、この作品には、舞台になった福島の復興支援という目的もあります。震災後の福島を見に行くと、本当にひどい状況で、政府の不毛な混迷に、地方が苦しんでいるという様子でした。
村上春樹さんが一昨年、エルサレムのスピーチで「システムと卵」というお話をされましたが、この作品も、卵である人々が、江戸幕府というシステムに立ち向かう内容です。
いわば、参勤交代が一種のデモになっています。
こういう流れはウォール街で起こっているオキュパイデモと同じで、今、私たちはアメリカの投資銀行とか、やったもの勝ちの物質至上主義というシステムと戦わねばならないと思います。そのためには、日本の礼儀や思いやりの思想、つまり一人一人の気持ちを大切にするという精神が、世界の人の拠り所にもなるだろうと思います。
この作品がそんな風に少しでも世界を変えられればと夢見ています。
第37回城戸賞 準入賞 黒岩康文『真夜中のゴースト☆ブギー』
この度は大きな賞を頂きありがとうございました。『真夜中のゴースト☆ブギー』は、青森からミュージシャンを目指して上京してきた女の子が、自分の部屋に住み着いていた同い年の女の子の幽霊の力を借りてプロデビューする話です。最初にこの話を思いついたのはかなり前です。それまで脚本を書いたことはありませんでしたが、書いてみたい話のストックは幾つかありました。そのどれかを書こう、と思いつつグズグズと時間が…7年も経っていました!そして、もういいかげん書くぞ、と選んだのがこの作品です。初めて挑戦する映画脚本なので、自分の好きな“音楽”を題材にしたこの作品なら最後まで書き切れると思ったからです。書き進めていく内に、当然何度も壁にぶつかりましたが、そんな時、自分を引っ張ってくれたのは、意外にも自分が書いているはずの主人公と幽霊の女の子でした。19歳の元気な女の子二人がどんどん物語を切り開き、21歳も年上の私が彼女達の後ろをやっとの思いでついて行ったという、不思議な感覚でした。今度の受賞は二人に大感謝です。そしてそんな二人の物語を優しい気持ちで最後まで読んで下さった審査員の皆様方、本当にありがとうございました。今後も多くの方々に映像で観たいと思って頂けるような脚本を書いていきたいと思います。
第37回城戸賞 準入賞 香坂隆史『ラブ・イン・ペイン』

「ラブ・イン・ペイン」は、最愛の息子を殺され復讐を決意する母親と、それを止めようとするカウンセラーの男。
二人の「愛」の物語です。
読んだ方からは、サスペンスと後半のどんでん返しに注目されましたが、自分はこの作品をラブストーリーのつもりで書きました。
大切な人間を奪われた遺族の心情というものを、経験のない自分が書くことに躊躇しましたが、失った人間たちが「愛」を取り戻す姿と、結果それでも「苦しみ」しか残らないこともある。そういうこの世の現実と不条理を表現してみたいと思いました。
価値のない作品だと途中で二度投げ出し、何でもいいから書き上げろという声に背中を押されて、数時間かけてセリフ一つ絞り出す日々を乗り越えて完成に至ったこの作品。改めて楽して書けるものはないと痛感しました。
助監督として修行中の自分は脚本家ではなく監督志望です。こうして賞を頂いたこの作品も、是非自身の手で世に出せるよう努力していきたいと思います。
評価して頂いた審査員の皆様、普段自分を支えてくれている仕事仲間、そして家族に感謝します。