第35回城戸賞 準入賞 早船歌江子『デモステネスと五月のプロペラ』
まずは、恩師・塩田千種先生に心から感謝の気持を伝えたいです。
今年の8月の終わりの日、自分の力不足を嘆きながら郵便局へ走ったことを思うと、このような歴史ある賞で準入賞に選んでいただいたことが、今でも信じられません。本当にありがとうございます。
タイトルの「デモステネス」は、吃音を乗り越えて大弁論家になった古代ギリシャの偉人、「プロペラ」は楓の翼果種子のことで、それぞれ主人公のコンプレックスと試行錯誤を象徴する言葉ですが、分かりづらい上に覚えにくいタイトルと評判が悪いです。こういった言葉選び一つとっても、書き手として責任のあることだなと実感する今日この頃です。今回の受賞で考えさせられることが多々あり、それだけを取っても贅沢な経験であると思っています。
選考に関わったすべての方々に、改めてお礼を申し上げます。
また、シナリオ講座47期生の面々に、いままでの感謝と共に、これからも変わらぬおつき合いをと申し添えたいです。
本当にありがとうございました。
第35回城戸賞 準入賞 西村淳哉『父を殺す日』
小学生の頃から映画ばかり見て映画の話ばかりして、「そうだ、将来の夢は映画の作り手がいいや」と通学途中のある朝決意して以来、ひたすらそれだけを考えて、あっという間にいい年の大人になってしまいました。
ようやく映画作りにたずさわる入り口に立つことができたという安堵、「やり続けてよかった」という喜びで今はいっぱいです。
松竹シナリオ研究所の鈴木敏夫所長、故・下飯坂菊馬先生、芦沢俊郎先生にはたくさんのことを教えていただき、お世話になりました。ようやく御恩に報いることが出来ましたと、この場を借りてお礼を申し上げます。
また、授賞式後の席でスラスラとあらすじや構成を批評してくださった審査員の方々の熱意と真摯さには、驚くとともに胸が熱くなりました。本当にありがとうございます。
今回の作品は、シングルマザーが増えて「父親不要」とさえ言い切る論客もある昨今の社会を見て、「父親の存在意義とは何なのか?」という疑問から生まれたものです。
「父性の果たす『掟』というものが崩壊して、社会の枠組みが危うくなっている」という、フランスの法学者ピエール・ルジャンドルのインタビュー記事と西部劇映画「ガンヒルの決闘」の二つが助太刀となり、なんとか手応えのある作品に仕上がりました。
もう一つのテーマは「時代劇」ということでした。
誰もが好きな映画やドラマを好きな時に見られる選り取り見取りの今という時代、日本映画が世界中の多彩なコンテンツと伍していくには、日本人にしか作れない「チャンバラ時代劇」を極めることこそ一番の近道なのではないか、という私なりの商魂で、はじめて時代劇執筆に挑戦しました。
これからが本当の勝負、受賞を無駄にせぬよう一つ一つのチャンスに全力で臨みたいと思っています。
第35回城戸賞 準入賞 友国陽介『さよなら万有引力』
驚きと、嬉しさと、驚きと、驚きで一杯です。このような賞を自分がいただくとは…
「さよなら万有引力」は、“悶々とした学校生活を送る男子”に最高の転機が訪れる物語です。学生時代に、「俺に翼があればなぁ…」という事をしょっちゅう妄想していた自分にとっての、理想の学校生活を描きました。
そもそも私は、高校時代の鬱屈とした思いを原動力として、脚本家になる夢を追いかけてきました。
所が10年近く経っても結果を残せない。自分にこの道は向いてない。……もう諦めよう。でもなぁ、書くこと以外にやりたい事が無いんだよなぁ……。
そんな事ばかり考えるようになっていた2009年11月、部屋に一人でいた私のもとに受賞の連絡は届きました。
突然の知らせを受けて「やった!」と大声を上げようとしました。が、壁の薄い安アパートでの絶叫はリスクが高い! 私は叫ぶのを一旦思いとどまると、近くにあったクッションを口元に当ててから……「ハッファ(やった)!」。もごもごと歓喜の声をあげました。
誰にも迷惑をかけずに大喜びするのと同時に、“突然、嬉しい知らせが届いた時のリアクション”を勉強しました。早速、次回作に生かしたいと思います。
最後に、審査員の皆様と、これまで自分に力を与えてくださった全ての方に。ありがとうございました。